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ブライアン・デ・パルマ監督

映画『パッション』│10月、TOHOシネマズ みゆき座他全国ロードショー!映画『パッション│10月、TOHOシネマズ みゆき座他全国ロードショー!

レイチェル・マクアダムス
ノオミ・ラパス
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10月4日(金)、TOHOシネマズ みゆき座他全国ロードショー!

イントロダクション

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サスペンスの魔術師、ブライアン・デ・パルマ監督が流麗な技巧を駆使して紡ぎ上げた殺人と官能のミステリー

若くして世界的な広告会社の重役の地位にのぼりつめたクリスティーンは、仕事でもプライベートでもとことん貪欲な女性である。キャリアアップのためなら手段を選ばない彼女は、有能かつ従順な部下のイザベルが考案した斬新なCMのアイデアを横取りし、まんまと社長の信頼を勝ち得ることに成功する。しかし都合のいい操り人形として手なずけたはずのイザベルがまさかの反撃に転じたことから、ふたりの出世争いは危険なパワーゲームへと激化。女性の内なる魔性のダークサイドを呼び覚ますその攻防は、ついにはおぞましい殺人事件へと発展するのだった……。
めくるめく恐怖と謎に満ちた『キャリー』『殺しのドレス』『ミッドナイトクロス』といった傑作で“ヒッチコックの後継者”と呼ばれるほどの魔術的なサスペンス演出を披露し、『アンタッチャブル』『ミッション:インポッシブル』などの娯楽大作でも世界中を魅了してきたブライアン・デ・パルマ監督。他の追随を許さない独創的なヒット作を世に送り続けてきたこの鬼才が、『リダクテッド 真実の価値』以来5年ぶりとなる待望の新作を完成させた。
デ・パルマ監督が最も得意とするサスペンス&ミステリー・ジャンルへの復帰を果たした『パッション』は、鬼才の完全復活を鮮烈に印象づけるとともに、このうえなくセンセーショナルな題材に挑んだ意欲作である。時代のトレンドを先取りし、生き馬の目を抜く熾烈な競争が繰り広げられる広告業界を舞台に、上司と部下の関係であり、なおかつ同世代のライバル同士でもあるキャリアウーマンふたりの闘いを描出。相手を出し抜く狡猾な駆け引きはもちろん、卑劣な官能と恥辱の罠までもが張り巡らされた物語は、中盤にショッキングな殺人シーンが炸裂するクライム・スリラーに転じ、さらにはその背後に仕組まれた完全犯罪をめぐるミステリーへと変貌を遂げていく。流麗な技巧を極めたサスペンス術で観る者を幻惑し、エクスタシーにも似た甘美な陶酔へと誘う“デ・パルマ・マジック”の真骨頂がここにある。

魅惑の二大女優レイチェル・マクアダムス、ノオミ・ラパスが女性の美しさと野心、そして恐るべき魔性をリアルに体現

デ・パルマ監督からの熱烈なオファーに応え、本作の成否の鍵を握る対照的なヒロインたちを演じたのは、ハリウッドで今最も勢いのあるふたりのトップ女優である。猛烈な上昇志向を剥き出しにしてエリート出世コースを突き進むクリスティーンに扮するのは、『きみに読む物語』『ミッドナイト・イン・パリ』や巨匠テレンス・マリックと組んだ『トゥ・ザ・ワンダー』など話題作が相次ぐレイチェル・マクアダムス。甘い囁きによって優秀な部下を操り、時には非情なパワハラ攻撃で破滅をもたらす攻撃的なキャラクターを、トレードマークのブロンドヘアも眩い優美なルックスで体現した。そんなクリスティーンが仕掛けた挑発的なゲームに巻き込まれるイザベル役は、『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』のリスベット・サランデル役で世界中を驚かせ、ハリウッド大作『プロメテウス』の主演を務めたことも記憶に新しいノオミ・ラパス。黒髪に黒ずくめのファッションという極端に地味な外見でありながら、奇抜な発想力と大胆不敵な行動力を隠し持つヒロインを演じきり、女性という生き物の驚くべきメタモルフォーゼを見せつける。

またハリウッドを離れ、ヨーロッパ資本のもとでこの企画に取り組んだデ・パルマ監督は、『ボルベール<帰郷>』『私が、生きる肌』などのペドロ・アルモドバル監督とのコラボレーションで名高いスペインの撮影監督ホセ・ルイス・アルカイネを招聘した。「女優の撮り方を知り尽くしている」とデ・パルマに言わしめたアルカイネは、ロケ地ベルリンのスタイリッシュな建築物を生かしながら、ストーリーの起伏に呼応して照明や色彩のトーンを変化させ、魅惑的な色気と緊迫感をまとった映像美を構築。デ・パルマの長年の盟友であるピノ・ドナッジオが奏でる音楽も、映画に妖しいスリルとエモーションを吹き込んでいる。
さらに本作の大きな見どころは中盤のバレエ・シーンである。もはやありきたりな殺人シーンなど撮る気のないデ・パルマ監督は、ニジンスキーとドビュッシーによる古典バレエ「牧神の午後」のコンテンポラリー・バージョンを挿入し、分割画面によってエレガントな“バレエ”と血塗られた“殺人”を同時進行させる奇想天外なシークエンスを創出。映画史上の伝説となった『殺しのドレス』のラスト・シーンを彷彿とさせる悪夢的なエンディングも見逃せない。

ストーリー

何故、イザベルはクリスティーンを復讐するまでに至ったのか?女と女、その恩讐の果てには一体、何が待ち受けているのか━。

クリスティーン(レイチェル・マクアダムス)は、野心を隠さず、狡猾さと大胆な行動で国際的な広告会社の重役へと登り詰めた。アシスタントであるイザベル(ノオミ・ラパス)は、当初は憧れを抱いていたが、手柄を奪われ、同僚の前で恥辱を受け、彼氏には裏切られ、それらすべてをクリスティーンが裏で糸を引いていたと知った時、殺意が芽生え、遂に殺害を決意する。
しかし、その計画は自分自身が不利になるような証拠を構築した矛盾に満ちたものだった‥。実行の日、イザベルはバレエに出掛け、一方のクリスティーンは誘惑を示唆するような招待状を受け取る。相手は不明だがサプライズを好むクリスティーンは、自宅の寝室で裸になり、この秘密の愛人との出逢いを心待ちにするのだが…。野心、欲望、嫉妬が渦巻く世界。美しい化粧の下に潜む殺意と情熱、その素顔。
果たしてイザベルは復讐を遂げたのか?謎が螺旋状に積み重なり合う殺人ミステリーの結末とは?女の諍いに運命の女神は誰に微笑みかけたのか━。

レイチェル・マクアダムス

レイチェル・マクアダムス

1978年、カナダ・ロンドン生まれ。演劇に親しみながら育ち、ヨーク大学で演劇の美術学士号を取得。何本かのTV作品に出演したのち、『ホット・チック』(02・未)で注目され、MTVムービーアワードのブレイクスルー演技賞に輝いた学園コメディ『ミーン・ガールズ』(04)、ライアン・ゴズリング共演の純愛映画『きみに読む物語』(04)で若きスター女優の仲間入りを果たした。その後は『幸せのポートレート』(05)、『ウェディング・クラッシャーズ』(05・未)、『パニック・フライト』(05・未)、『あぁ、結婚生活』(07)、『それぞれの空に』(08・未)、『消されたヘッドライン』(09)、『きみがぼくを見つけた日』(09)、『恋とニュースのつくり方』(10)といった話題作に次々と出演し、世界的に大ヒットした冒険ミステリー活劇『シャーロック・ホームズ』(09)とその続編『シャーロック・ホームズ シャドウゲーム』(11)ではアイリーン・アドラー役を熱演。また最近ではウディ・アレン監督のファンタジー『ミッドナイト・イン・パリ』(11)、チャニング・テイタムと共演したラブ・ストーリー『君への誓い』(12)、巨匠テレンス・マリックによる夢幻的な恋愛映画『トゥ・ザ・ワンダー』(12)に出演した。今後の新作としてリチャード・カーティス監督作品『About Time』(13)、アントン・コルベイン監督作品『A Most Wanted Man』(13)などが控えている。

ノオミ・ラパス

ノオミ・ラパス

1979年、スウェーデン・フーディックスヴァル生まれ。7歳の時に出演したアイスランド映画『In the Shadow of the Raven』(88・未)で女優のキャリアを踏み出し、その後、20本以上の映画とテレビ作品に出演。悩める十代の母親を演じたデンマーク映画『Daisy Diamond』(07・未)で絶賛され、複数の映画賞を受賞した。スティーグ・ラーソンのベストセラー小説を映画化した『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』(09)で異色のヒロイン、リスベット・サランデル役を射止め、スウェーデンのアカデミー賞にあたるゴールデン・ビートル賞の主演女優賞などを獲得。イギリス・アカデミー賞やヨーロッパ映画賞にもノミネートされ、世界的なブレイクを果たした。続編の『ミレニアム 火と戯れる女』(09)、『ミレニアム 眠れる女と狂卓の騎士』(09)にも出演したのち、『シャーロック・ホームズ シャドウゲーム』(11)でロバート・ダウニーJr.、ジュード・ロウと共演。巨匠リドリー・スコットのSFアドベンチャー『プロメテウス』(12)で、初めてハリウッド大作の主演を務めた。そのほかの主な出演作は女優ペルニア・アウグストの監督デビュー作『Beyond』(10・未)、ポール・シュレットアウネ監督の北欧スリラー『チャイルドコール 呼声』(11)。『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』のニールス・アルデン・オブレヴ監督と再びタッグを組む犯罪映画『Dead Man Down』(13)などの新作が控えている。

カロリーネ・ヘルフルト

カロリーネ・ヘルフルト

1984年、ドイツ・ベルリン生まれ。1994年に通っていた学校の校庭でエージェントにスカウトされ、その翌年にTV映画で女優デビューを果たす。『クレイジー』(00)、『GIRLS★GIRLS』(01)、『ビタースウィート』(02)といった劇場映画で着実にキャリアを積み重ね、トム・ティクヴァ監督がパトリク・ジュースキントのサスペンス小説の映画化に挑んだ『パフューム ある人殺しの物語』(06)に出演。それ以降の主な出演作には、バイエルン映画賞およびドイツ映画批評家協会賞の最優秀女優賞を受賞した『A Year Ago In Winter』(08・未)のほか、『愛を読むひと』(08)、『ブラッディ・パーティ』(10)、『ヴィンセントは海へ行きたい』(10・未)などがある。

ポール・アンダーソン

ポール・アンダーソン

2006年のTVシリーズ「ドクター・フー」のシーズン2で初めてクレジットされ、イギリスのTV作品に数多く出演。サッカーのフーリガンを題材にしたニック・ラヴ監督作品『The Firm』(09)で、劇場映画の主演デビューを飾った。その後はガイ・リッチー監督のアクション・ミステリー大作『シャーロック・ホームズ シャドウゲーム』(11)、スコットランドの高地を舞台にした山岳アクション『クライムダウン』(11・未)、ニック・ラヴ監督と再び組んだ犯罪映画『ロンドン・ヒート』(12)に出演。今後の新作としてウベルト・パゾリーニ監督作品『Still Life』(13)、ブリン・ヒギンズ監督作品『Electricity』(13)などが控えている。

ブライアン・デ・パルマ

ブライアン・デ・パルマ

1940年、ニュージャージー州ニューアーク生まれ。コロンビア大学在学中に映画の魅力に目覚め、卒業後、本格的に映画製作に乗り出す。1963年から『御婚礼/ザ・ウェディング・パーティー』(69・未)に取り組むかたわら、ニューヨークを拠点にしてドキュメンタリーを製作。駆け出し時代のロバート・デ・ニーロと組んだ『ロバート・デ・ニーロのブルー・マンハッタン/BLUE MANHATTAN Ⅱ・黄昏のニューヨーク』(68・未)でヴェネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞し、フィルムメーカーとしての足場を固めた。その後、移住先のハリウッドで挫折を経験するが、ニューヨークで再起を図った『悪魔のシスター』(73)が一部で絶賛され、続く『ファントム・オブ・パラダイス』(74)もカルト的な支持を獲得。スティーヴン・キング原作の超能力ホラー『キャリー』(76)の成功で人気監督の仲間入りを果たした。『愛のメモリー』(76)、『フューリー』(78)、『殺しのドレス』(80)、『ミッドナイトクロス』(81)、『ボディ・ダブル』(84)で披露した華麗なるサスペンス演出ゆえに“ヒッチコックの後継者”と呼ばれる一方、『スカーフェイス』(83)、『アンタッチャブル』(87)、『カジュアリティーズ』(89)などの娯楽大作や問題作を発表。往年のTVシリーズのリメイク『ミッション:インポッシブル』(96)でトム・クルーズと組み、世界的なヒットに導いたことでも知られている。そのほかの作品には『虚栄のかがり火』(90)、『レイジング・ケイン』(92)、『カリートの道』(93)、『スネーク・アイズ』(98)、『ミッション・トゥ・マーズ』(00)、『ファム・ファタール』(02)、『ブラック・ダリア』(06)、ヴェネチア国際映画祭監督賞を受賞した『リダクテッド 真実の価値』(07)などがある。

インタビュー

ブライアン・デ・パルマ監督を魅了した女性同士のパワーゲーム

『パッション』はフランスのアラン・コルノー監督の遺作となった『ラブ・クライム 偽りの愛に溺れて』(10)のリメイクだ。このサスペンス映画は説得力のあるミステリーとして、また企業の道徳性を描くダークでコミカルな風刺劇としてヨーロッパで人気を博した。特に女性主人公ふたりの間に起こる戦慄の争いを描いた映画として際立っていた。 その設定に興味をそそられたブライアン・デ・パルマ監督は、物語の筋を再考した。オリジナル版の主人公たちは中年の上司と若いアシスタントだったが、ふたりを共に野心を抱く同世代の女性たちに変更した。監督が語る。「物語に引きつけられた。サスペンス・スリラーだったからだ。僕にとってビジュアル的な語り口にもってこいのジャンルだ。楽しめる要素がたくさんあると思った。それに22年前の『レイジング・ケイン』(92)以来、このジャンルは手がけていなかったからね」。
「オリジナル版のキャラクターたちは好きだが、僕は異なるやり方で中心の殺人事件を浮き彫りにしたいと思ったんだ。常に驚きがあるように脚本を書き換え、誰が殺人犯なのかわからないように多くの容疑者を登場させた。さらに別のことが起こっているときに、観客には異なるものを信じ込ませるようなトリックもかなり使っている」。脚本も兼任した監督は、主人公たちの関係性の変化についても解説する。「ふたりは競争心が強く、相手を思い通りに操ろうとするところがある。物語が進むにつれ、彼女たちは相手に対してあらゆる種類のパワープレイを使っていく。官能プレイや心理プレイを使い、自分のポジションを固めようとするんだ」。
さらに監督は女性の視点を取り入れるために、オリジナル版の脚本を手がけたナタリー・カルテールを招いた。しかし最終脚本で語られているのは、明らかにデ・パルマ監督の過去作品に流れる、人の心をつかんで離さない多くのテーマと同じものである。特に執着心、二重人格、常軌を逸した行為、最も美しく優雅に飾られた化粧板の下に横たわる破壊的な亀裂は今回も健在だ。
なぜデ・パルマ監督は、瓜ふたつのドッペルゲンガーというコンセプトに引きつけられるのか。「自分でもわからない。僕は自分の映画で罪悪感を抱く状況を繰り返し描いている。例えばクリスティーンが双子の姉クラリッサの事故に責任を感じていると言うようにね。それは僕が幼かった頃の家族に原因があると思う。僕の家族には、弱い人間に対して容赦しないところがあった。僕の父と母と兄ブルースがそうだった。僕は10歳でもうひとりの兄のバートは12歳だったが、彼はとても繊細で弱かった。僕はそうした怒りから彼を守りたかったが、できなかった。子供だったからね。それが罪悪感になっているんだ!」。
仮面もまた物語を通して流れるテーマのひとつだ。イザベルがクリスティーンの自宅で発見する仮面にはデスマスクのイメージがあり、私たち全員がそういう心理的な仮面をまとっている。「クリスティーンは自分のセックスの相手に、自分の顔に似た仮面をつけさせる。それによって彼女は、常に自分自身と愛の営みを交わしていることになる」と監督は説明する。「仮面は彼女の謎めいた双子の姉妹なんだ。その姉妹が本当に存在していようといまいとね」。
本作には夢、悪夢、幻想が錯綜している。監督にとってそれが脚本の重要な鍵だった。「僕はいつも眠っている間に、夢の中で自分の映画の問題を解決している」と監督は説明する。「この映画は何が真実で何が違うのか、目覚めるまでわからない夢を見ているような感じだ。それに犯罪の手順を、非常に洗練された夢の世界に織り込んでいくことで楽しさが倍増するんだ」。その楽しさの一部は、最後のシーンまでパズルのピースを完成させていない状態に観客を置いておくことだった。「完全に謎が解明するまで、誰が殺人に成功したのかわからないように組み立てた。それこそがミステリーのあるべき姿だからね」。

恐れを知らない主演女優たちのセクシュアルな挑戦

『パッション』の重要な鍵となるのが主演女優ふたりのキャスティングだった。「オリジナル版のアラン・コルノー監督は、キャラクター間の性的な惹かれ合いについて避けて通っていた。だがレイチェル・マクアダムスとノオミ・ラパスは、それをストレートに演じたんだ。僕はふたりに“キスして、エロチックに”などとは指示していない。彼女たちがそうしただけだが、とても効果的だったよ」。さらに監督が付け加える。「レイチェルとノオミは『シャーロック・ホームズシャドウゲーム』(11)で共演し、安全地帯から危険なゾーンに足を踏み入れることができるほど、お互いを熟知していた。ふたりは何事も恐れずに挑戦した。とてもエネルギッシュで心を揺さぶる姿勢だったよ」。
これまで恋愛映画、ドラマ、コメディで多彩な女性像を演じ分けてきたマクアダムスは、人を引きつける魅力と執拗な野心を持ち、悪意のある陰口を平然と言えるクリスティーンに必要な陰影のすべてを兼ね備えた女優だった。監督が振り返る。「レイチェルはとてもセクシーだ。ものすごく邪悪な女性を楽しんで演じていたよ。女優はクリスティーンのように操るのがうまいタイプの女性を演じたがらない傾向にあるが、レイチェルは全力を尽くして演じてくれた」。
マクアダムスがこの強烈な役について語る。「クリスティーンはイザベルを完全に抑え込むくらい威圧している。ところが驚いたことにイザベルが応酬してくるの。ある意味、クリスティーンはサキュバスのような女だわ」。生贄とする人間を誘惑し、魂を盗む伝説の魔女を例に出しながらマクアダムスは続ける。「彼女はイザベルのような新しい才能を見つけ出し、磨きをかけ、自分の利益のために利用しようとするのよ」。
またデ・パルマ監督は、『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』(09)で名高いノオミ・ラパスの不安定さを表現する高い能力に魅了された。「ノオミはとても恐ろしい。彼女の頭の中で何が起こっているかわからない。彼女なら本当に人を殺せると思えてしまうんだ」。ラパスにとってイザベルの魅力は、どんどん野心という泥沼にはまり込んでいくところだったという。同時に、高級なイメージを保つ国際的な広告会社という舞台設定にも引きつけられた。「登場人物たちが広告の世界にはまり込んでいるところが面白かったわ。常にトップに君臨し、一歩先のアイデアを出し続けなくてはならない世界なの」。
イザベルは新しいスマートフォンのオリジナル・アイデアを考え出し、自分が出世競争で一歩リードしたと自負する。しかしそれは恐ろしいパワーゲームの始まりにすぎないのだ。「イザベルは上司のクリスティーンからゲームのやり方を学べると思っていたの」。ラパスが語る。「でも心の中ではクリスティーンより優れていて、もっと成功できると信じている。それがダンスの駆け引きを生み出すのよ」。やがてそのダンスは、クリスティーンがイザベルを残酷に辱めた瞬間からすべての様相が変化する。「クリスティーンの武器のほうが自分よりはるかに洗練されていることに気づいたイザベルは、自分の中の暗闇を駆り立てていく」とラパスは語る。「他人の前で辱められたとき、彼女の悪魔の扉が全部開いてしまう。クリスティーンはその扉のかんぬきを引き抜いてしまうの」。

観る者を危険な混乱に誘うバレエと殺人のシークエンス

クリスティーンとイザベルのライバル意識が悪意あるパ・ド・ドゥへと変化したとき、デ・パルマ監督は文字通り劇中にバレエのシーンを導入した。ステファヌ・マラルメの夢と願望の詩に基づくニジンスキーとドビュッシーのクラシックバレエ「牧神の午後」を、ジェローム・ロビンスが現代的にステージングした舞台が繰り広げられる間に、クリスティーンへの殺人が実行されるシークエンスである。
このバレエは映画の物語と調和している。ロビンスは牧神と彼の気を引く乙女の物語を、鏡に映る自分たちの姿に魅了され、官能的なつながりを感じながら、飾り気のないスタジオでリハーサルする現代舞踏家たちに置き換えた。監督が語る。「完璧なバレエだ。死の接吻について描いている。イザベルは死にゆく者にキスするマフィアのボスのように、クリスティーンにキスをする。ドビュッシーの有名な楽曲に基づくロビンスの振付では、イザベルがクリスティーンを冒涜するのと同じように、ダンサーが突然バレリーナの頬にキスし、ある意味そのバレリーナを冒涜するんだ」。
そのバレエの構成にデ・パルマは心を打たれた。監督は続ける。「そのバレエの舞台には3方向に壁があり、ダンサーはスタジオの鏡の壁を覗き込んでいるかのように観客と対峙する。それによって、彼らにカメラをまっすぐ見てもらうことができ、4番目の壁のルールを破り、そのシーンに奇妙な雰囲気を醸し出すことができた。アルフレッド・ヒッチコック監督も『パラダイン夫人の恋』(47)のような映画で、時折“一人称のカメラ”を用いている。のちにイザベルが警察に逮捕されたときも、尋問シーンを最大限に生かすためにその手法を再び使った」。
バレエにスクリーン上での息吹を与えるため、監督はベルリン国立バレエ団から、非常に優れたリードダンサーであるロシア出身のポリーナ・セミオノワとトルコ出身のイブラヒム・ウェーナルを招いた。また監督は分割画面のテクニックを駆使し、そのバレエと、深夜の謎の密会を待ちながら洋服を脱ぐクリスティーンと、彼女のアパートで繰り広げられる出来事を並行して映し出した。隣り合った画面が、誰が何を見ていて、出来事がどのように起こっているのかという疑問と好奇心を増幅させる。
デ・パルマ監督が説明する。「誰かが殺される設定はいつでも非常に難しい。通常はその家の周りに緊張感と静けさが漂うが、それは誰もが何百万回も見てきたものだ。そこで僕はスクリーンを分割するという異なる手法を選んだ。これは僕がしばらくやっていなかった方法だ。非常に美しいバレエで観客を夢中にさせながら、一方の画面ではクリスティーンが切りつけられる。一方の画面は非常にロマンティックで、片方の画面は非常に暴力的という並列に対して観客がどう反応するか、まったくわからなかったが、僕はその奇抜さが気に入っている。何が起こるかわからないまま、危険地帯にいるような感覚があるんだ」。

女性美をエレガントに追求したベルリンでの撮影

クリスティーンとイザベルのライバル意識が悪意あるパ・ド・ドゥへと変化したとき、デ・パルマ監督は文字通り劇中にバレエのシーンを導入した。ステファヌ・マラルメの夢と願望の詩に基づくニジンスキーとドビュッシーのクラシックバレエ「牧神の午後」を、ジェローム・ロビンスが現代的にステージングした舞台が繰り広げられる間に、クリスティーンへの殺人が実行されるシークエンスである。
このバレエは映画の物語と調和している。ロビンスは牧神と彼の気を引く乙女の物語を、鏡に映る自分たちの姿に魅了され、官能的なつながりを感じながら、飾り気のないスタジオでリハーサルする現代舞踏家たちに置き換えた。監督が語る。「完璧なバレエだ。死の接吻について描いている。イザベルは死にゆく者にキスするマフィアのボスのように、クリスティーンにキスをする。ドビュッシーの有名な楽曲に基づくロビンスの振付では、イザベルがクリスティーンを冒涜するのと同じように、ダンサーが突然バレリーナの頬にキスし、ある意味そのバレリーナを冒涜するんだ」。
そのバレエの構成にデ・パルマは心を打たれた。監督は続ける。「そのバレエの舞台には3方向に壁があり、ダンサーはスタジオの鏡の壁を覗き込んでいるかのように観客と対峙する。それによって、彼らにカメラをまっすぐ見てもらうことができ、4番目の壁のルールを破り、そのシーンに奇妙な雰囲気を醸し出すことができた。アルフレッド・ヒッチコック監督も『パラダイン夫人の恋』(47)のような映画で、時折“一人称のカメラ”を用いている。のちにイザベルが警察に逮捕されたときも、尋問シーンを最大限に生かすためにその手法を再び使った」。
バレエにスクリーン上での息吹を与えるため、監督はベルリン国立バレエ団から、非常に優れたリードダンサーであるロシア出身のポリーナ・セミオノワとトルコ出身のイブラヒム・ウェーナルを招いた。また監督は分割画面のテクニックを駆使し、そのバレエと、深夜の謎の密会を待ちながら洋服を脱ぐクリスティーンと、彼女のアパートで繰り広げられる出来事を並行して映し出した。隣り合った画面が、誰が何を見ていて、出来事がどのように起こっているのかという疑問と好奇心を増幅させる。
デ・パルマ監督が説明する。「誰かが殺される設定はいつでも非常に難しい。通常はその家の周りに緊張感と静けさが漂うが、それは誰もが何百万回も見てきたものだ。そこで僕はスクリーンを分割するという異なる手法を選んだ。これは僕がしばらくやっていなかった方法だ。非常に美しいバレエで観客を夢中にさせながら、一方の画面ではクリスティーンが切りつけられる。一方の画面は非常にロマンティックで、片方の画面は非常に暴力的という並列に対して観客がどう反応するか、まったくわからなかったが、僕はその奇抜さが気に入っている。何が起こるかわからないまま、危険地帯にいるような感覚があるんだ」。

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