総合病院からクリニックに転職した看護師だけど質問ある?


私は看護師として大学病院に約10年勤めてきました。
その後、総合病院に師長として招かれ、今はクリニックの副医長をしています。

病院はピラミッド組織です。
私は、ピラミッドの上から下まで多くのポジションを経験しました。

そうした経歴もあり、最近は講演会や転職セミナーのご依頼が増えています。

※先日の横浜セミナーでは、斉藤先生や水嶋先生に大変お世話になました。
この場を借りてお礼を申し上げさせていただきます。

セミナーの中で感じたのは「クリニックへの転職で悩んでいる方が多い」という事実です。
私もクリニックへの転職時は、大いに悩んだものです。

そこで今回は「クリニックへの転職」をテーマに、受講者の方から頂いているご質問に私なりの回答をしたいと思います。

クリニックに転職してどう?

病棟に比べると、体がかなり楽になりました。
医療行為は減りましたし、身体介護もほぼなくなり、時間に追われることも少なっています。

特に夜勤がないのは、やはり良いものです。
人間らしい生活と言いますか、慢性的な体のダルさがすっかり無くなりました。

残業は毎日1時間ほどしています。
でもこれは私の立場上のもので、一般の看護スタッフはほぼ残業がありません。
あっても30分程度に収まっています。

もちろん繁忙期には忙しくなります。
ですが一時的なものであり、どのスタッフも家庭とのバランスを取ってやりくりできています。

精神的な負担も減りました。
病棟における命のやり取りは、知らず知らずのうちに心を消耗させているようです。
あのプレッシャーから解放されたのは、想像以上に大きいと感じています。

ただし、そうした環境に物足りなさを感じるのも事実です。

クリニックが物足りない?

医療行為が少なく、バタバタすることもあまりありません。

「看護師はバリバリ働いてなんぼ」
「忙しく働く自分が好きだ」

という方は一定数存在します。
そういった方にクリックには向かないでしょう。

もちろんクリニックにくる看護師は、のんびりした環境だと知って転職してきます。
ですが実際に働いてみると「予想以上にのんびりしていた」と感じるのです。

これはどうしようもないと思います。
実は私も物足りなさを感じたことがあります。
「忙しかった病棟が懐かしい」と思ったこともあります。
他の看護スタッフからも同じような悩みを何度か聞いています。

こうした気持ちは、クリニックで働いていると次第に薄くなっていきます。

それでも「看護師としてのキャリアが終わる」「看護師としての成長が止まる」「スキルが身に付かない」と危機感を持ち続ける人もいて、そうした方はいずれまた病棟に戻るケースが多いように感じています。

クリニックではスキルが身に付かない?

ご存知の通り、病棟ほどは期待できません。

クリニックでは、身に付くスキルが限定されてしまいます。
クリニック経験しかない看護師の方と働けばわかりますが、お世辞でもスキルを持っているとは言えません。残念ながらどの方も。

ハッキリ言えば、クリニックでは看護スキルが伸びません。
もちろん患者さんへの対応、各種マネジメントなど、社会人としてのスキルは伸びるでしょう。
しかし看護師としてはストップするという意味です。

専門性の高いクリニックであればスキルも伸びるのでは?

確かにそうですよね。
私もそうだと思います。

ですがそういった専門的なクリニックは、別の環境だと考えた方がいいでしょう。

一般的なクリニックは「町のお医者様」といった意味合いが強く、症状の軽い患者さんばかりです。働いているスタッフも既婚者が多く、スキルよりも生活を重視している方ばかりです。そうした中でスキルアップのモチベーションを保ち続けるのは、やはり難しいと言えます。

スキルを身につけたい方は、無難に病棟を選ぶのがよいと思います。
クリニックは、生活を重視する方が選ぶ職場です。

特に若い方は、病棟でスキルを磨くのをおすすめします。

1年目ですがクリニックに転職したいです…

最近では新卒でクリニックを選ぶ方も多くなってきました。

病棟は激務ですからね。
クリニックでゆっくり働きなるのは無理もありません。

当クリニックにも1年目(第二新卒)や新卒の方が応募してきてくれます。

しかし今はすべてお断りしています。
ハッキリ言って新卒でクリニックはオススメできません。

先ほども申しましたが、クリニックでは基礎的な看護スキルが身に付きません。
新人研修を行っているクリニックも皆無でしょう。

クリニックの仕事は、病棟と比べて楽だと思います。
つまりそれはルーチンワークの仕事が中心ということです。
毎日同じことの繰り返しでは、スキルも経験も育ちません。

新卒の3年間は最も成長できる時期です。
その時期は、やはり病棟での仕事に従事してほしいのです。

クリニック経験だけでは、将来の幅がかなり狭まるでしょう。
看護師は仕事に困らないと言われていますが、クリニック経験のみの方は職場探しに苦労しているようです。

就職先が見つかったとしても、周りの看護師と比べてスキルが大きく劣ります。
「その年でこんなこともできないのか…」と失望されることも少なくないと聞きます。

一般的な病棟で3年間経験を積めば、どこに行ってもある程度やっていける力が付きます。

3年間が難しい方は、せめて1年間は病棟で経験を積みましょう。
それだけでも将来の幅がグンと広がりますので。

病棟からクリニックへの転職で迷っています

病棟からクリニックへの転職は、看護師のキャリアとして一般的です。

ですが初めてクリニックに転職するときは、やはり迷いもあると思います。

特に多いのは、下記のような悩みでしょうか。

「このまま病棟でキャリアを積むべきか」
「それともクリニックに転職して生活を重視するか」

難しい問題だと思います。

まずはご自分が何を重視したいのか考えてみてください。

キャリア重視なのか?
プライベート重視なのか?

看護人生としては大きな分岐点になると思います。

しかしながら、お若い方でもやがて結婚をすると、キャリアを捨てて、生活を重視しなければいけない日がやってくるでしょう(もちろん配偶者の協力にもよりますが)
つまりは多くの方は、いずれキャリアを捨てることになるのです。

「後で捨てるなら、今捨ててしまおう」という考えもありだと思います。

もちろんクリニックで働いても、また病棟に戻ることもできます。
「また病棟で働きたい」という話はよく聞きますし、実際に戻る方もいますし、当クリニックでも何度かありました。

看護師は転職しやすい職業のため、やり直しは何度でもできます。
だからこそ「迷っているなら一度試してみましょう」と思うのです。

未経験の診療科でもやっていける?

たいていは大丈夫です。
クリニックはルーチンワークです。
最初は大変かもしれませんが、仕事を覚えてしまえばあとは楽だと思います。

当クリニックでも未経験の看護師を採用していますが、1ヵ月も経てば、周りのスタッフと同じように働けています。

未経験かどうかよりも、基礎的なスキルを持っているかどうかが重要だと思います。
基礎スキルは、汎用性が高く、いろんな診療科で応用できますので。

病棟で一定期間働き、基礎スキルを身に付けた方なら、たいていのクリニックで勤められるかと思います。

クリニックは休みが取りづらい?

そうですね。
クリニックは看護師数が少ないため、休みのやりくりが大変です。
急に休みたい時でも、代行スタッフを見つけるのが病棟以上に大変です。

もちろんこれはクリニックによって違います。
ギリギリの人数でやりくりしているクリニックは、やはり休みが取りずらいです。
子供の行事に参加できない、平日に休みが取れない、という話はよく聞きます。

しかし、人数に余裕があるクリニックでは、病棟よりも休みが取りやすくなります。

例えば当クリニックは、休みが取りやすいクリニックだと言えるかもしれません。
毎日スタッフ1名を余分にして、急な休みに対応しています。
たいていは私が余剰分になっており、普段は事務作業や外部との連絡業務をして、突発的なことがあればそのスタッフの代役として働いています。

また一般的なクリニックは、午前と夕方が忙しい時間帯です。
その時間は、一人欠けるだけで途端に仕事が回らなくなったりもします。
そんな時に「休ませてほしい」とは、なかなか言い出せないものです。

もちろん忙しい時間帯は、どのクリニックも人員を増やしたいと思っています。
しかし朝と夕方は、主婦が忙しい時間帯と重なってしまいます。
募集をかけても集まりづらいです。

その対策として某クリニックでは「夕方17時~19時は時給2700円」とかなりの高待遇で募集をかけたそうです。
これにはかなりの反響があり、一瞬で3名の増員が決まりました。
2時間で5400円ですからね。

その結果として、正社員の残業が減り、有休も取りやすくなり(夕方のパートさんに頼めば午前も入ってくれる)、離職率も下がり、クリニックの雰囲気も良くなり、みんなが喜んでいる状態だというのです。
こういったクリニックであれば、休みも取りやすく、働きやすい職場と言えるでしょう。

働きやすさは、クリニックよってかなり格差があるので注意してください。

クリニックの格差は診療科次第?

そうですね。
診療科によって待遇が違ってきます。

やはり儲かっているクリニックほど、待遇はよくなります。
その儲けは、診療科によるところも大きいです。

例えば数年前、心療内科クリニックが乱立したのを覚えているでしょうか。
これには理由があって、患者さんの数が増加した(世間の心療内科への抵抗感が薄れたため)のも理由の1つですが、それ以上にコストがかからないからです。
高額な医療機器が必要なく、医療行為がないため看護師も必要なく、店舗と事務員だけで始められます。

一般的なクリニックの開業資金は最低でも5000万円からと言われていますが、心療内科クリニックであれば1000万円ほどで開業できてしまうのです。
クリニックに内科が多いのも同じような理由ですが、心療内科はそれ以上に低コストだったのです。

その後、心療内科は点数を下げられてしまい、前ほどの勢いはなくなってしまいました。
それでも儲かる診療科の一つに挙げられています。

他にも、手堅く儲かる眼科だったり、今後も流行り続けるであろう美容外科、国が推し進めている予防医療の整形外科やリハビリテーションなどは、看護師の待遇も良くなりやすいのです。

クリニックで「手取り30万円、月収40万円」というのは、こうした儲かっているクリックだからこそできる高待遇です。

待遇の良いクリニックは、儲かっているクリニックです。
同じクリニックとは言えども、その待遇は全く別物だと考えておきましょう。

ただし注意しておきたいのは「儲かっていても院長次第」という点です。

看護師の待遇は院長次第?

はい。通りです。
クリニックは院長によってその雰囲気をガラリと変えてしまいます。

小さな病院の意思決定は、院長の独断です。
院長の判断一つで、私たち看護師が働く環境はコロコロと変わります。

逆に大きな病院の意思決定は、多くの人がかかわります。
そのため大きな病院では、院長を変えたところで、私たち看護師が働く環境は特に何も変わりません。

クリニックは院長の個人経営です。
いわばワンマン系であり、院長の独断で物事が決まっていきます。

そうなるとクリニックは「院長のカラー」が前面に出てきます。
スタッフを大切にするタイプ院長なのか、他人に興味を示さないタイプの院長なのか、私腹を肥やすタイプの院長なのか。

例えば単純な話、院長が物静かなタイプなら、私語の少ない静かなクリニックになります。
院長が話好きななら、ガヤガヤと賑やかなクリニックになります。

利益があればそれをどうするかは院長次第です。
スタッフに還元せず、発散する先生も多いです。
目が飛び出るほどの高級車を買ったり、豪華な自宅を買ってみたり、毎晩高級なクラブを飲み歩いたり、愛人を何人も抱えたり。
勤務医からは想像もできないほど羽振りが良くなり、浮かれてしまう話はよく聞くものです。

クリニックは院長の権力が絶大です。
クリニックは院長の望む方向に進みますし、私たちスタッフもそれに従わなければいけません。

「クリニック選びは、院長選び」と言っても、言い過ぎではないのです。

院長によって何が違うの?

待遇の良し悪しが全く違います。
休みの取りやすさだけではなく、給料、有休、福利厚生、社会保険完備、通勤方法、変則シフト、忙しさ、雑務の量が違ってきます。

つまり看護師としての働きやすさが全く異なります。

これらは全てコストの問題です。
お金があればすべて解決します。

一般的には儲かっている企業ほど待遇はよくなりますし、経営難な企業ほど待遇が悪くなります。
トヨタやGoogleといった大企業の待遇の良さ(立派な社員食堂、手厚すぎる福利厚生、高い生涯賃金)は、テレビでもよく流れていますよね。

クリニックも同じです。
儲かっているクリニックほど待遇が良くなります。

クリニック経営は、技術力よりも、営業力がものをいう世界です。
いかに効率的に患者さんを集められるか。
もっと言えば、点数効率の良い患者さんだけを集められるか。
ということなのです。

医療人としては、ちょっと嫌な話ですよね…。
でもクリニック経営にはこうした院長の商売人としての視点が重要なのです。

待遇の良いクリニックはどんな感じ?

まずはお給料が全然違います。
一般的なクリニックは基本給20万円ほどですが、良いクリニックになれば25万円~30万円ほどと病棟に匹敵する金額になります。
高収益な一部の眼科や美容外科では、35万~45万という話も耳にします。

またクリニックでは有休が取れないところが多いです。
しかし人員に余裕があるクリニックでは、しっかり消化できています。
給料に換算すると年間20万円ほど損をすることになりますので、有休の有無は結構大きいです。

また通いやすいように駐車場を整備してくれたり、生活に合わせて変則的なシフトを認めてくれたり、残業代がしっかり出たり、福利厚生サービスに加入していて2泊3日の家族旅行が自己負担3万円ほどで行けたり。

しかし、クリニックによってはこれらの待遇が全くありません。
基本給は10万円台、有休無し、福利厚生なし、社会保険も一部未加入、人手不足で激務、事務員さんがおらず看護師が請求業務、しかもサービス残業。
待遇は、院長が違うだけで天と地ほど違います。

これがクリニックなのです。

例えば、当クリニックはスタッフに還元してくれるタイプの院長のため、他のクリニックから転職してきた方が「前のクリニックで働いていたのがバカらしくなる」と言っていました。
言葉は悪いですが、無理もないと思います。
実質賃金に換算すれば、倍以上の差がありますので。
月に10万~20万円も損をしていたということですから。

クリニックの待遇は、経営状況次第、院長次第です。

待遇の良いクリニックはどこにある?

残念ながら、良いクリニックほど見つかりません。
そうしたクリニックは数が少ないうえに、待遇の良いクリニックは看護師が辞めないため、求人がほぼ出ないからです。

当クリニックも今は募集をかけていません。
年に1回出すかどうかです。

求人を出す際もハローワークや求人サイトには出していません。
応募者が多くなりすぎて選考が大変ですし、クリニックが望んでいる人材が来てくれるとも限らないからです。
クリニックに合わない方が来て、途中で辞められるのは大きくコスト負担になります。
また他のスタッフにどうしても悪影響が出てしまいます。

そうしたことから、今は転職エージェントに頼んでひっそりと募集をかけています。
もちろん転職エージェントの料金は、紹介料が一人30万円ほどとお高いです。
それでも途中で辞められるデメリットに比べてれば、小さなものだということで、転職エージェントを利用して看護師を探しています。

良いクリニックは転職エージェントで探せばいい?

探せる可能性は高いです。
もちろん必ずではないですが、資金のあるクリニックほど転職エージェントを利用していますので。

看護師にとても転職エージェントを利用するメリットはあるかと思います。
どんなクリニックなのか細かく教えてもらえるだけではなく、院長の人柄、離職率、残業量などまで教えてもらえます。

またクリニックの要望に沿った人材を探してくれるという点も、看護師にとってはメリットになります。
クリニックと看護師のミスマッチを減らすという意味でもあり、合わないクリニックに転職するのを防いでくれるからです。

転職エージェント経由の転職は、失敗を減らせるとは言いますが、私もそのように思います。

実際私は、今のクリニックを転職エージェントからから紹介されました。
他のスタッフもほぼ転職エージェントからの紹介ですが、離職率はかなり低く(生活の変化、病棟への復職くらい)、皆の満足度は高い状況です。

転職エージェントが沢山あって迷っている。どこがいい?

転職エージェント(人材紹介会社)は、日本に10,000社以上あると言われています。

転職エージェントもその良し悪しに差があります。
親身なエージェントもいれば、紹介料だけを稼ごうとする悪徳エージェントもいます。

良いエージェントは、たいてい大手の紹介会社に所属しています。
大手ほど好待遇のため良いエージェントが集まりやすく、教育もしっかりされているからです。

資金力にも余裕があるため、紹介料だけを稼ごうと無理に転職を勧めることもありません。
むしろ無理に転職させて失敗し、信用が落ちることを嫌っているため、大手ほど慎重で丁寧なサポートをしてくれます。

転職エージェントを利用するときは、大手の紹介会社に登録するのがポイントです。

大手の転職サイトは、下記の記事を参考にしてみてください。
日本の大手3社が比較されており、年間の利用者数や、求人数などが参考になります。

>>>看護師におすすめの大手3社【ナース報道室】

※転職サイト=人材紹介会社です